Topic「は」主題 と Subject「が」主体

吉川 武時
2018年9月20日
改訂 10月1日
増補 10月15日
Youtube の日本語講座の動画には「は」と「が」の違いについてのものがすごく多い。 なぜこんなに多いのか。どの動画も説明がよく分からないからだ。
「は」は主語を表すのではない、という日本語研究者の説の通り、 Topic を表す、と説明しているのはいいが、 Topic とは何かが分かっていないようだ。例文に主語と言ってもいいものを出して、これが Topic だと言っている。
は Topic を表す。
が Subject を表す。
これはいいが、
私は日本人です。
と言う文を出して、「私は」はどう考えても Subject なのに、 これが Topic だと言い張っている。Topic と Subject の違いが分かっていないのだ。
Topic と Subject が違う例を出せばいいのだ。そうすれば、Topic とは何かが分かるはずだ。それについては後で述べる。
また、こんな説明もあった。
「は」の後には疑問詞が来る。例 これ何ですか。
「が」の前には疑問詞が来る。例 だれ来ましたか。
韓国語では「これが何ですか」のように言うが。
どれあなたの本ですか。これ私の本です。
どれがあたなの本ですか。xこれは私の本です。
だれ来ますか。木村さん来ます。
だれが来ますか。x木村さんは来ます。
このように問答で示せば、「は」でなく「が」を使う場合がよく分かり、 「は」と「が」はどう違うか、などという質問は来なくなるはずである。

1 名詞文と動詞文

日本語教育の第1課で学ぶような「~は~です」(これは本です)という文型を名詞文と言う。
一方、「~は~をする」(私は本を読む)のような文型を動詞文と言う。[形容詞文は名詞文に準ずる。]
名詞文と動詞文とでは「は」の働きが違う。 これを区別せずに、topic だ、subject だ;既知情報だ、未知情報だなどと言っても 学習者は混乱するばかりである。
名詞文における「は」と動詞文における「は」は区別して説明すべきである。

2「は」は(=)イコール

名詞文の「は」は(=)イコールだ、という考え方がある。 Yahoo知恵袋にそのような書き込みがあった。
なるほど、
 3+3=6 3足す3は6
 これは本だ これ=本
 私は日本人 私=日本人
「だ」は何か、と問われれば、「だ」はメンバーが一つだけの指定詞(山田文法)であるが、文の体裁を整えるための助詞、終助詞の一種とも考えられる。
「これは本よ」と「だ」なしでも言える。
「私は~」とあれば、なんでも I am ~ と言う中学生がいる。
be動詞を教え過ぎるからだ。一般動詞になっても、例えば
「私はテニスをする」を I am play tennis.と言ってしまうのだ。

3 Topic と Subject の違い

Topic と Subject の違いを説明するにはそれに適した例文を出さなければならない。
それには三上章の「主語廃止論」を学ぶ必要がある。(『続・現代語法序説』1959)。
三上の説は主語ということばはあいまいだから、止めよう、 その代わりに主題主格という用語を使おう、というものである。
主題は Topic に当たる。主格ということばは名詞の形自体の変化を想像させるから、私は主体と言っている。動作主(英語では actor、agent と言えばいいか)のことである。
(1)太郎は荷物を運んだ。
(2)荷物は太郎が運んだ。
この文の(1)では「太郎」は主題であり、主体である。この「主題であり、主体である」というのが、外国の人は分からないのだ
「は」のかげに「が」がかくれているのである。
(2)では「荷物」が主題で、「太郎」が主体ということになる。 このような主題と主体が違う文は
ケーキは母が作り増した。
旅行の計画は彼がします。
代金は私が払います。
などいくらでもある。 これは主題化変形の文である。主題化変形の文については 前に書いたことがある。 (主題化変形の文)。 こういう文をもっと出して、 主題と主体の違いを説明すればいいのに、そういうのは YouTube には一つしかなかった。
さらに
(3) 太郎が荷物を運んだ。
という文もある。これは主題のない文である。
そして、(1)のように主題と主体が同じ場合うっかり主語と言ってしまうことがある。
ま、主語と言ってもいいだろう。主語の復活だが、それは主題と主体が同じ場合に限る。 (1あ(19